今では街角のカフェや喫茶店、そしておうちでも気軽に多彩なフレーバーを楽しむことができるココアですが、いつ頃から飲まれているのでしょうか。歴史をたどってみましょう。
カカオ豆がお金!
ココアの原型が食された歴史はかなり古く、原産地である南米では紀元前1500年頃すでに利用されていました。
オルメカ、マヤ、アステカなど古代文明ながら高度な文化を発展させていた時代、カカオは非常に貴重な作物として扱われ、カカオの産地を巡っての争いが起こっていたほどです。
時代や地域によって作物が貨幣としての役割を持つ例は多いものですが、ここではカカオがその対象となりました。
時代や場所でその価値の変動はありましたが、例えばカカオ10粒でウサギ1匹、カカオ100粒で奴隷1人分というような交換基準となっていたようですから、どれほど貴重であったのかがわかります。
カカオ豆は特別な食物だった
またカカオは神へ捧げる神聖な供物とされ、結婚式などの特別な儀式の際に飲まれる最高位の飲み物でした。
当然一般庶民には縁のないもので、王侯貴族だけが口にできるセレブドリンクだったわけです。
カカオ豆の学名である「テオブロマ カカオ(Theobroma Cacao)」は、ギリシャ語で「神の食べもの」の意味ですから、当時のカカオのイメージが感じられますね。
なぜこれほどまでに珍重されたのかということですが、おそらくカカオ豆のもつ栄養的な特徴が理由となっていると思われます。
今でこそ様々な成分がその効果ととともに明確になっていますが、そういったものが当時はすでに体感として、理解されていたのでしょう。
単なる嗜好品としてではなく、滋養強壮剤や健康を保持するサプリメントとして薬のような位置づけだったようです。
摂取の方法としては、カカオ豆を乾燥させ、すりつぶして粉状のものを利用していました。
現在のように豊富に砂糖がある時代ではなかったためか、飲みやすくするために他の薬草や穀物と混ぜるのが一般的だったようです。
現在の甘くて美味しいココアやチョコレートドリンクとは、まったく異なる飲み物だったようですね。
カカオからとれる油脂のカカオバターは、体温でも溶けるため軟膏などとして利用されていました。
古代王国の中にも、ココナツオイル美容にはまった姫がいたかもしれませんね。
美味しくなったのはいつから?
南米原産のカカオを先に持ち込んだのはコロンブスでしたが、人気は今いちだったらしく、広まることはありませんでした。
その後アステカを征服したコルテスが国王カルロスⅠ世に献上したため、現地でのカカオの価値や効用などの情報が伝えられ、人気を博したようです。
ナッツ、バニラや砂糖を加えて飲みやすく工夫されたカカオは、特権階級の飲み物として、ヨーロッパ全土に広がってゆきました。
しかしながら、18世紀までは、油脂分の多いカカオマスと呼ばれるペースト状のものを、熱湯に溶かして飲んでいました。
そのため、かなり刺激も強く、決して飲みやすいものではなかったようです。
コンラッド・バン・ホウテン、そう、あの有名な老舗ココアメーカーの創始者です。
時は1828年、「ダッチ・プロセス」と呼ばれる油脂の一部を搾油する技術を成功させたバン・ホウテンは、当時のオランダ国宝から名誉の勲章を授与されています。
ちなみに日本とココアの最初の出会いは、18世紀後半の長崎と言われています。
ただし「しょくらあと」と呼ばれていましたので、おそらくは固形のものだったのかもしれません。
今ではおなじみの純ココア。
いかがでしたか?歴史が深いですね。
現在では、砂糖やミルクを加えてさらに溶けやすく加工された調整ココアも数多く販売されています。
最近はココアポリフェノールなど、ココアの美容や健康への効果が再認識されて、ブームとなっていますね。
遠い遠い昔、神様の食べ物として大切にされ、その後海を渡って洗練され続けてきたカカオ。
ココアを飲む時、ちょっとだけ思いをはせ、歴史ロマンに浸ってみるもの素敵です。
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