漢方薬が対処療法であるのに対して、ホルモン補充療法(HRT)は、更年期障害を根源から治療します。
減少していく女性ホルモンを外から補充するのです。
ホルモンバランスが整うと自律神経が安定するので、辛かった更年期障害がすみやかに改善されます。
海外の更年期障害の治療は、HRTが圧倒的に主流です。
オーストラリアは60%、フランスは50%、フィンランドやスウェーデンも30%以上がHRTを選択しています。
日本ではHRTはまだ少数派ですが、薬価が低く安全性の高い薬剤が増えてきたのに伴い、これから増えていくと予想されています。
HRTを受ける前に
婦人科で血液検査、尿検査、子宮・卵巣超音波、乳がん検診などを受けて女性ホルモンの量を確認しましょう。
その結果、ホルモンの値が基準値以下であればHRTを受けることができます。
HRTの投与法
その人の体の状態に合わせて、投与方法を選ぶことができます。例えば、閉経前でまだ症状が軽い場合は低用量のエストロゲンのみを短期間使用。
閉経して5年以上が立つ場合にはエストロゲンとプロゲステロンの両方を併用。
使用する期間と休薬する期間、薬の量も状況に合わせて選択できます。
周期的に投与する場合、月経と似たような出血を伴うことがあります。
HRTに使われる薬剤
HRTは、基本的にエストロゲンとプロゲストロンの併用療法です。
エストロゲン補充薬には飲み薬(錠剤)と貼り薬(パッチタイプ)、塗り薬(ジェルタイプ)があります。
プロゲステロン補充薬には飲み薬と子宮内挿入型があります。
また、この二つを合わせて配合した薬剤もあり、体内に入った後にホルモンとして作用する力の強弱を考慮して選択することになります。
こんな方はHRTができません
子宮がん、乳がんの治療中の方、抗エストロゲン療法を行っている方は、女性ホルモンの量が増えると危険なのでHRTを受けることはできません。
副作用は医師に相談
乳房や下腹部が張る感じがする、眠くなるなどの副作用が出る場合には、医師に相談しましょう。
HRTの量や使用期間を調節しながら最大限の効果が出るポイントを見つけていくことが大切です。
HRTを行うと乳がんリスクが上がる?!
2002年にアメリカ国立衛生研究所が「HRTを5年以上投与した女性は乳がんになるリスクが26%増える」と発表しました。
しかしその後、この臨床試験の正当性が問われ、2006年に日本の厚生労働省の研究班が行った調査では「HRTを受けると乳がんの発症リスクが60%減る」ということが確認されました。
現在はHRTの有用性と安全性が広く認識されています。
この記事へのコメントはありません。