えごま油は、東南アジア原産のシソ科の植物「荏胡麻(えごま)」の種子からとれる油です。オメガ3必須脂肪酸のαリノレン酸が豊富に含まれていて、認知症の予防やダイエットに効果的といわれるスーパーフード。
えごまの実(穂) | えごま |
えごま油の魅力
自然界トップクラスのオメガ3オイル
青魚に多く含まれるDHAやEPAといったオメガ3必須脂肪酸は、人間が自己生成できない必須栄養素。えごま油には、このオメガ3必須脂肪酸のひとつ「α-リノレン酸」が60%近く含まれています。スーパーフードのなかでも、これほどオメガ3脂肪酸を含む食品は少なく、「畑の青魚」と言っても過言ではありません。そして、えごま油の効果の大部分は、実はこのα‐リノレン酸によるものです。
α‐リノレン酸に期待されている機能性や研究が進められているテーマは、
・余分な脂質(脂肪分)の代謝をサポートする=メタボ対策やダイエット
・血液をサラサラにする、中性脂肪やコレステロール値、血糖値を下げる=生活習慣病予防
・免疫力を高める=花粉症などのアレルギー疾患を抑える
・脳細胞や神経を刺激、活性化する=認知症やボケ防止につながる
・腸内環境を整える=便秘の改善や大腸ガンなどの予防
ほか、多岐にわたります。この「α‐リノレン酸」をわずかスプーン1杯で手軽に効率よく摂取できることが、えごま油に注目が集まる理由です。
えごま油の食べ方
一般的に言われる推奨量は、1日小さじ1杯(2~4gほど)です。そのまま食べるか、料理などに使うなどして利用します。
ただ料理に使用する場合、えごま油に含まれるα‐リノレン酸は熱に弱いため、お酢と醤油などと混ぜてドレッシングにしたり、オリーブオイル感覚でパンにつけて食べる、といった利用法が基本です。お味噌汁や温かいパスタなどにえごま油を回しかけるような使い方もOKですが、少し冷ますなどして温度に注意して下さい。また、揚げもの油や炒め油などのように、高温で長時間加熱するような使い方は控えるようにしましょう。
なお、焙煎えごま油のように香ばしいものや、精製えごま油のようにソフトな風味のものは色々な料理に使えますが、未精製えごま油だけは独特の風味がしますので、苦手な方は香りの強い料理に合わせるような使い方になります。
えごま油の選び方
1.原産地を見極める
日本で販売されているえごま油のほとんどは、中国・韓国・日本のいずれかが原産国となっています。日本人であれば国産を選びたいのが本音ですが、日本産のものは信頼できる反面、品薄で割高になっているため、コストパフォーマンスがとても悪いのがネックです。
ここで選択肢になってくるのが外国産のえごま油。外国産には、えごまの栽培から製油まで全て外国で行われているものと、製油の工程のみ日本で行う場合があり、それぞれ賛否両論はありますが、信頼できるメーカーが搾油・製造したものであれば、原材料のえごま種子がどこのものであろうと、基本的に品質に差はでません。しっかりとしたものさえ選べば、国産と変わらない・またはそれ以上のものが安く手に入るチャンスです。
■本場の韓国産から選ぶ
もともと、えごま油は日本よりも韓国が本場。現地のスーパーで売られているようなものから、有機グレードやオイルコンクール入賞品のような高級えごま油まで、選択肢はかなり豊富ですので、韓国で知名度や実績のあるものを選べば、下手な国産よりも風味も安全性も兼ね備えたものを安く手にいれられます。特に、品質の高い韓国産の焙煎えごま油は、風味が良く日本料理にも使いやすいと感じます。
なお韓国も、中国産のえごま種子に依存しているケースが多いです。原産国表記のルール上、原産国・輸入国が「韓国」となっていても、原料のえごま種子は中国の場合があります。植物油の原産国のルールについて詳しく知りたい方は、下の方に書いた「えごま油の豆知識~紛らわしい原産国の表記~」をお読みください。
■高品質の中国産を探す
えごまの栽培量が圧倒的に多いのが中国。日本や韓国のえごま油メーカーでも、中国産のえごま種子や中間製品(粗油)を使っているところは少なくありません。どうしても「中国産」というだけで信頼性を疑ってしまいがちですが、先入観は禁物。ウーロン茶のように、中国だから高品質のものがとれることだってあります。実際、中国のえごまでも、品質の高いものが存在するのも事実です。そういった製品に出会うためには、日本や韓国の企業の契約農場・工場となっているところを選ぶようにして下さい。こういった農地や工場は、農薬や化学肥料の使用を制限していたり、栽培・製造工程が厳格に管理されています。
特にロシアの国境付近に位置する中国北部などは土壌も大気もたいへん清浄ですので、質の高いえごまがとれるようです。
2.製造方法を吟味する
えごま油は、製造方法の違いが風味や安全性、価格に影響を与えます。
■焙煎と非加熱
えごま油には、原料となるえごま種子を焙煎してから搾油するものと、そのまま搾油したものがあります。本場といわれる韓国は、どちらかといえば焙煎えごま油の方が主流です。焙煎することのメリットは、香りが良くなることですが、どうしても加熱処理が入るため、酸化していないか気になります。焙煎えごま油を購入される場合は、成分分析がしっかりと行われおり、品質証明できるメーカーから購入するようにしましょう。
また非加熱の場合はそういった心配がありませんが、原料となるえごま種子の保管・殺菌状態が悪いと、劣化して風味や安全性を損なってしまいます。こちらも慎重にメーカーを選ぶようにしましょう。
■精製と未精製
精製作業は、えごま種子を搾油した粗油から、不純物を取り除く作業です。
精製=化学処理というイメージがありますが、そういうことではありません。精製工程では自然の素材だけで不純物を取り除く製法も多くあります。精製したものは通常、不純物の除去や脱臭加工を経ているため、えごま独特のクセがなく食べやすくなっています。しかし、精製作業が化学処理なのか天然由来の処理なのかは素人に分からないことが多く、ノンケミカルを希望される方は避けた方が無難かもしれません。
未精製の方は、文字通り精製工程を経ずに製造されるえごま油です。
未精製とはいえ通常は濾過を重ねて不純物を取り除きますので、丁寧なメーカーであれば問題ありません。ただ、昔ながらの濾過方法は手間と時間がかかる作業のため割高になることや、未精製えごま独特の風味があり好き嫌いが分かれます。また、精製しなければそのコストが不要になるため、粗悪なものまで「未精製で安全」と謳って高く売ることも可能です(もちろん、濾過工程も素人に分かりにくいように雑に仕上げています)。未精製は「化学処理や化学物質不使用でクリーン」というイメージを与えますが、そういった認識は避けましょう。
えごま油の豆知識
1.紛らわしい原産国の表記
日本の場合、植物油は原産国表示義務がない食品分類ですが、それでも原産国を表記しようとする場合には「最終加工地」を原産国とするのが世界標準です。そのため、原料や中間製品(粗油)が海外の原料だったとしても、圧搾や精製を日本国内で行った場合は「国産」と表記される場合があります。
これが紛らわしいため、一部の製油メーカーでは「最終加工地:●●/原料原産地△△」などのように誤解を与えないような表記をしたり、原産国そのものを記載しないこともあります(複数の原産地の原料が混ざるサラダ油などは、表示管理が煩雑になりかえって誤解を招くため、原産地が書かれていないことが多いです)。
ところが、国産のえごま価格が急騰したのをいいことに、このルールを悪用して完全に国産と勘違いしてしまいそうな表記をしたり、輸入したえごま油を別の容器に移し替えただけなのに「最終加工地:日本」などと謳い、高い値段をつけるような悪質業者も増えました(なお、単なる詰め替え作業は最終加工にはあたりませんので、完全にルール違反です)。こういった業者のえごま油を購入することはトラブルの原因になりますので、避けるようにしましょう。
2.売られているえごま油の色がバラバラなのはどうして??
市販されているえごま油は、色の濃いものから薄いものまで色々な種類がありますが、これには大きく3つの理由あります。
・精製作業によるもの
えごま油のメーカーによっては、不純物を取り除く精製作業の際に、活性白土(粘土の一種)などで色素も取り除く場合があります。
・焙煎加工によるもの
香りを良くするために、えごま種子を焙煎してから搾油する「焙煎えごま油」の場合、やや褐色で色味が強くなります。上の方でも書いたとおり、粗悪な焙煎がなされたものは酸化している場合がありますので、信頼できるメーカーのものを選んでください。
・原材料の個体差によるもの
えごま種子は農産物のため、一粒一粒、色素の量に多少のバラつきが生じます。ただし、この差が搾油時の色の濃さに大きく影響することは、あまりありません。
3.国産えごまを栽培している地域
日本国内で大規模にえごまを栽培・製造している地域は少なく、国産のえごまやえごま油は自給率がとても低いのが実情です。どこも需要過剰で売り切れが続いていますが、知っている限りのえごま産地を紹介します。
島根県川本町・・・テレビ番組でも紹介された国産えごま油の産地
島根県奥出雲町・・・同県内の川本町と同じく、えごま農家のある地域
岐阜県白川町・・・世界遺産の白川郷で有名な地域。えごまの栽培農家がある
岐阜県飛騨市・・・「あぶらえ」などの呼び名でえごまを栽培してきた地域
岩手県奥州市衣川区・・・「じゅうねん」などの呼び名で、古くからえごまを栽培してきた地域
宮城県色麻町・・・岩手県と同じく、伝統的に国産えごまを栽培している
福井県勝山市・・・小規模だが、えごま油の搾油まで行う事業所がある
富山県富山市山田村・・・えごまの栽培や国産えごま油などの加工品を製造する事業所がある
静岡県磐田市・・・えごまの栽培やえごま油などの加工品を製造する事業所がある
福島県田村市・・・伝統的にえごまを栽培してきた地域。国産えごま油などの加工品もある
宮崎県宮崎市佐土原町・・・無農薬の国産えごまを栽培している事業所がある
栃木県茂木町・・・10ヘクタール級の作付を行う、えごまの産地
えごま油のトラブル
2016/1 /28付で、国民生活センターからえごま油に関する報道発表がありました。概要は、市販されているえごま油の一部で、α-リノレン酸の含有量が著しく少な いなどの問題点があったとの指摘です。調査対象となった20銘柄のうち、何らかの問題を指摘された7銘柄・企業の概略は、次のようになり ます。
■調査対象20銘柄一覧(独立行政法人国民生活センター報道発表資料より)
※通販で人気があったり店頭で並んでいたものが無作為に選ばれているだけであり、20銘柄全てに問題があったわけではありません
■問題のあった7銘柄の概略
2.生搾りえごま油(アルプロン製薬株式会社) 計量法では、えごま油など食用植物油脂の内容量を「g(グラム)」で記載することが義務付けられているにも関わらず、mLで表記していた。 7.オットギエゴマ油(オトギ製油株式会社) 食品表示基準で日本語表記が義務づけられている義務表示事項が、韓国語のみで記載されていた。また、計量法では、えごま油など食用植物油脂の内容量を「g(グラム)」で記載することが義務付けられているにも関わらず、mLで表記していた。 10.荏胡麻油(有限会社菅野房吉商店) α-リノレン酸の含有量が、標準値となる60%を大きく下回る33.6%しか含まれていなかった。 15.純えごま油100(株式会社バイオセーフ) 計量法では、えごま油など食用植物油脂の内容量を「g(グラム)」で記載することが義務付けられているにも関わらず、mLで表記していた。 16.有機えごま油(株式会社ハンズトレーディング) 計量法では、えごま油など食用植物油脂の内容量を「g(グラム)」で記載することが義務付けられているにも関わらず、mLで表記していた。 17.エゴマ油(輸入者:ファイブスター株式会社/製造元:スンイン食品) 計量法では、えごま油など食用植物油脂の内容量を「g(グラム)」で記載することが義務付けられているにも関わらず、mLで表記していた。また、栄養成分表示の項目名や記載順序が、食品表示法の定めから逸脱していた。 19.一番搾り荏胡麻油(ボーソー油脂株式会社/輸入者:有限会社昌宏コーポレーション) 栄養成分表示の記載順序が、食品表示法の定めから逸脱していた。 ※「10.荏胡麻油(有限会社菅野房吉商店)」については、「ホントにえごま油だったのか?」と疑問が残ります。また、ほかの6銘柄・企業についても、コンプライアンスが保たれていたとは言い難い銘柄です。 |